○乗り味と推進感。そのベストバランスに驚いた50km

今日、COLNAGO FOR FERRARI CF3で初めて、ある程度の距離を走ってきた。
距離は約50km。平坦路、荒れた路面の上り坂、下り坂、そしてゆっくりと走る時間も含め、いろいろなシチュエーションを試すことができた。
先に一言で、このバイクの印象を表現しておこう。
乗り味と走りの力強さ、つまり推進感。そのベストバランスにある一台。
自転車のインプレッションというと、走りの力強さや加速性能から語ったほうが、多くのサイクリストの興味を引くのかもしれない。
しかし、普段から現代のロードバイク、SPECIALIZED TARMAC SL8に乗っている自分としては、まず乗り味を評価したかった。

なぜなら、今回のCF3には、単に速いとか、軽いとか、そういう言葉だけでは表現しきれない魅力があったからだ。
○現代のロードバイクとは違う、フレームの仕事
現代のロードバイクは、フレームに高性能な素材を使い、軽さと剛性を追求する。空力に優れた形状を与え、ホイールによって走りの特性を変え、乗り心地については太いタイヤに大きな役割を担わせる。
もちろん、すべての現代のロードバイクがそうだというわけではない。あくまで、普段から現代のバイクに乗っている自分が感じている傾向だ。
それぞれのパーツが専門的な役割を担い、組み合わせることで一台の高性能なロードバイクを作り上げている。そんな印象がある。

ところが、今回のCF3は違った。
フレームそのものが、走りに必要な仕事を幅広くこなしている。
コンポーネントはその動きを助け、ホイールは推進力を加えるようにしっかりと回る。
もちろん、これは自分が乗って感じた印象であって、構造を測定して導き出した結論ではない。
それでも、実際に走ってみると、そんなふうに感じずにはいられなかった。
その理由を、今日のライドを振り返りながら書いてみたい。
あえて空気圧7.5kg/cm²。23mmタイヤで走り出す
今回、ひとつ試してみたいことがあった。
タイヤの空気圧を、あえて10年以上前の感覚を思い出すように7.5kg/cm²まで上げてみたのだ。
しかも、タイヤ幅は今となっては細い23mm。
現代のロードバイクにこの組み合わせを持ち込んだら、まず見た目からして細い前輪に少し不安を感じるかもしれない。そして走り出せば、路面からの音が激しくなり、手に衝撃が伝わり、視界まで揺れる。そんな乗り味を想像していた。

ところが、CF3は違った。
今朝は少し寒く、今年初めてウインドブレーカーを着て走り始めた。
身体もまだ温まっていない。最初は軽めのペースで走っていたのだが、ふと気づいた。
「あれ? 自転車の音が静かだな」
風の音やウインドブレーカーのパタパタという音に隠れているのかと思った。しかし、そうではない。
自転車そのものが静かだった。
もうひとつ、不思議なことがあった。
タイヤの空気圧を高く設定したことを忘れてしまうくらい、路面を舐めるように走っていくのだ。
「空気が抜けたのかな?」
一度止まってタイヤを触ってみる。
カッチカチに空気が入っている。
それなのに、走りはしなやかで静か。この感覚には驚かされた。
路面からの衝撃に、角がない
TARMAC SL8では段差を越えると、ペダルにも「カツン」という衝撃が伝わってくることがある。
道がうねっているところや、亀の甲羅のようにアスファルトが割れているところでは、手のひら、シート、ペダルのそれぞれに衝撃を感じるものだ。
ところがCF3では、その衝撃の角が取れている。
衝撃そのものが完全になくなるわけではない。しかし、手のひらにも、シートにも、ペダルにも、どこか柔らかくなったような感覚で伝わってくる。
23mmという細いタイヤに高い空気圧。
数字だけを見れば、乗り心地が厳しくなりそうな組み合わせだ。
それなのに、実際の乗り味はまったく違う。
タイヤだけに乗り心地を任せているのではなく、フレームを含めた自転車全体で路面からの入力を受け止めている。そんな印象を受けた。
もちろん、フレームだけがその感覚を生み出していると断言することはできない。タイヤ、ホイール、フレーム、そして自分の身体が一体となって生み出している乗り味なのだろう。
それでも、CF3という自転車全体のまとまりの良さを強く感じた。
○荒れた急坂が楽しいと感じてしまう
走り始めて約10km。身体がある程度温まったころ、200mほどの短い急坂が現れる。
ここは路面がかなり荒れている。
例えば雪がたくさん降る地域で、除雪車が何度も走った結果、アスファルトが砕けるように荒れてしまったスキー場の道路。そんな路面を想像してもらうと近いと思う。
先日、同じ坂をTARMAC SL8で走った。
痛い。跳ねる。
ペダルに力を込めても、ホイールが小刻みに跳ねてしまい、タイヤがちょこちょこと空転するような感覚がある。
力をかけたいのに、かけづらい。
こんな坂こそ、30mm以上のタイヤを履いて、空気圧を3.5kg/cm²くらいまで下げたくなる。
そんな路面だ。
ところが、CF3は23mmという劇細のタイヤで、難なく上っていく。
見た目から想像する動きとは、まったく逆だ。
そのことに戸惑いながらも、走りが気持ちいい。
不安を感じることなく、走ることそのものに没頭できる。
荒れた路面なのに、ハンドルをふわっと握れる
CF3には、カンパニョーロの11速、ワイヤー式コンポーネントを組み合わせている。
一方、TARMAC SL8にはSRAM REDの電動変速を使っている。
そのため、CF3では親指を使ったり、レバーを大きく操作したりすることに、最初は少し考える必要があった。
しかし、坂を上るうちに、そんな違いは気にならなくなっていった。
後輪のトラクションが安定している。
自転車全体の挙動も落ち着いている。
そして、ダンシングで身体を左右に振ったときの自転車の動きが、実に穏やかだ。
左右に振る速度も、身体の動きにジャストについてくる。
自転車が勝手に先走るわけでもなく、身体の動きを邪魔するわけでもない。
自分の動きに、ちょうどよくついてきてくれる。
そのおかげで、荒れた路面なのにハンドルを抑え込むことも振り回す必要もなく、ふわっと握ることができる。
坂の途中で勾配が増せば、その自由な右手の人差し指でギアを軽くする。
反対に、勾配が緩んできたら、親指を使ってギアを重くしていく。
その一連の操作をしながらも、視線は坂の先を見定めたまま。思いどおりに走りを組み立てていける。
普通なら、こんな荒れた急坂ではハンドルを握りしめたくなるところだろう。
緊張した手でハンドルを握り、電動変速のスイッチをチョンと押して、路面の変化に対応する。
ところがCF3では、ハンドルを強く握りしめる必要を感じない。
同じロードバイクなのに、この世界観の違いは何なのだろう。
素晴らしすぎる。
○坂の頂上で、まだ脚が残っている

さらに驚いたのは、坂の頂上付近だ。
脚が残る。
ギアを重くして、そのまま頂上へ突き抜けていけるような印象すら持てる。
ただし、ここはCF3だけの特徴とは言い切れない。
現代のピナレロ DOGMA Fでも、同じような感覚を味わったことがある。
これはCF3が特別に優れているというよりも、ヨーロッパのメーカーが作り出す設計思想に、自分の好みが合っているのかもしれない。
自転車が力を受け止めるだけではなく、乗り手の動きと路面の状態を含めて、走り全体をまとめてくれるような感覚。
そんなロードバイクが、自分には合うのだろう。
○見た目からは想像できない乗り味
それにしても、CF3のフレーム造形は現代のロードバイクと比べると、かなり印象が違う。
フロント周辺は細く、頼りなくさえ見える。
リア周辺では、チェーンステーが細く、シートステーが太い。
見た目だけで判断するなら、少し不思議なバランスだ。
ダンシングなどで自転車を左右に振ったとき、フロント周辺が細ければ、力をかけても逃げてしまい、前に進まないのではないか。
反対に、ペダルに主に乗るようにして、フレームをこじらない走り方をしたとしても、推進力を伝えるチェーンステーが細くて弱ければ、力が逃げてしまうのではないか。
さらに、リアの振動吸収に関わるシートステーが太ければ、乗り心地も硬くなるのではないか。
そんなことを考えてしまう。
もちろん、実際のフレームの剛性や振動特性は、パイプの太さだけでは決まらない。素材、積層、形状、接合部など、さまざまな要素が関係する。
それは分かっている。
それでも、見た目から受ける印象と、実際の走りの感覚が、これほど違うのは面白い。
細く見えるフロントは、頼りなさを感じさせない。
細いチェーンステーなのに、力をかけるとしっかり進む。
そして、荒れた路面でも衝撃の角が取れている。
見た目のバランスだけでは、まったく説明できない乗り味がある。
コルナゴの作りは本当に素晴らしい。
別に、わざと見た目をアンバランスにしておいて、中身で帳尻を合わせるような、まどろっこしい作り方をしているわけではないだろう。
見た目と機能を別々に考えるのではなく、ひとつの自転車として仕立て上げた結果が、この形なのかもしれない。
そんなことを想像しながら走るのも、また楽しい。
○カンパニョーロのクランクとウルトラトルク
この乗り味には、カンパニョーロのカーボンクランクとウルトラトルクのBB構造も関係しているのだろうか。
自分は、そう感じている。
クランクを通して脚に伝わる感覚。ペダルに力をかけたときの反応。そして、後輪が路面を捉えながら前へ進んでいく感覚。
それらが、うまくつながっているように思えるのだ。
クランク周辺がしっかりと力を受け止めながらも、後輪の出力特性は穏やかで、路面を捉えながら推進力へとつながっていく。
また、ウルトラトルクの構造が、クランク周辺の一体感や剛性感に関わっている可能性もある。

もちろん、今回のライドだけで、それぞれのパーツがどの程度寄与しているかを判断することはできない。
それでも、フレームだけ、クランクだけ、ホイールだけという個別の評価ではなく、すべてがうまく作用しているように感じられた。
CF3は、パーツの性能をひとつずつ足し合わせた自転車というより、全体がひとつの乗り味を作り出している自転車。
自分には、そんなふうに思えた。
○平坦路でも下り坂でも気持ちいい
CF3は、荒れた急坂だけが得意なわけではない。
フロントから見たときのシルエットは細い。
その見た目どおり、平坦路でも下り坂でも、気持ちよく伸びていく。
そして、スピードが上がっても静かだ。
荒れた路面では衝撃の角が取れ、平坦路や下り坂では静かに伸びていく。
速く走ることだけを主張してくるのではなく、走っている時間そのものを気持ちよくしてくれる。
自分がCF3に感じた魅力は、まさにそこにある。
○疲れた脚で乗ったはずなのに
実は、今日の自分の脚は、昨日のトレーニングでかなり疲れていた。
今度、ライドをご案内する予定があり、そのコースの下見に行こうと思っていたのだ。
TARMAC SL8を出すと、ついついトレーニングのような走りになってしまう。
今日は、ちょっとした楽しみと、落ち着いた気分を味わいたかった。
自然とペースを上げる気にならないように、CF3を選んだつもりだった。
ところが、走り始めると楽しくなってしまった。
シッティングで走り、ダンシングを試し、重いギアも軽いギアも使う。
結局、アグレッシブに乗りまくってしまった。
それなのに、走り終えてみると、脚は無事だった。
もちろん、50km走っただけで疲労が少ない理由をCF3だけに求めることはできない。昨日のトレーニングの内容や走行強度など、さまざまな要素が関係するだろう。
ただ、今日の自分にとっては、楽しく走れたうえに、脚への負担をそれほど意識せずに済んだことが大きな発見だった。
ゆっくり走るつもりで選んだ自転車なのに、楽しくて、つい積極的に乗ってしまう。
それでいて、走り終えたときの印象は悪くない。
こんなロードバイクもあるのか。
○カンパニョーロは、自転車との対話を楽しませてくれる
最後に、もうひとつ書いておきたいことがある。
カンパニョーロのコンポーネントについてだ。
レバーを操作したときの感触は、どこか柔らかい。
それでいて、クリック感はしっかりとある。
変速操作のひとつひとつに、確かな手応えがあるのだ。
慣れてくれば、リアの変速機がどのあたりのギアに入っているのか、指先の感覚から判断できるようになる。
単にギアを変えるための機械というよりも、手で触れて、その状態を感じ取れるもの。
まるで有機物を触っているような感覚さえある。
そして、手にはカンパニョーロのレバー、脚には絶妙な感触のクランク。
その両方が、自転車と常に対話しているような感覚を生み出してくれる。
バイオメカニクスという言葉だっただろうか。
例えば、義手を自分の手のように使いこなすために、人間の身体の動きや神経からの信号を利用して制御する技術がある。
もちろん、今回の感覚がそうした技術と直接結びつくという話ではない。
ただ、機械を単に操作するのではなく、自分の身体の延長のように感じながら扱えること。
CF3とカンパニョーロの組み合わせには、そんな感性に訴える魅力があるように思う。
自転車が乗り手の動きを受け止め、乗り手もまた、自転車の状態を感じ取る。
そのやり取りが自然にできる。
まるで、生きた自転車だ。
○やっぱり、コルナゴが好きだ
自分はいつも、こう言っている。
「自転車が1台しか持てないならコルナゴ」
今回、COLNAGO FOR FERRARI CF3に乗るのは初めてだった。
それでも、やはり大好きなメーカーだと再認識した。
現代のロードバイクには、現代のロードバイクの良さがある。
TARMAC SL8の性能も、DOGMA Fで感じた走りの力強さも、それぞれに魅力がある。
だから、どれかひとつが絶対的に優れているという話ではない。
ただ、今回のCF3には、自分がロードバイクに求めているものが、実にうまくまとまっていた。
○乗り味がいい。
荒れた路面でも安心して走れる。
力をかければ、気持ちよく前に進む。
スピードが上がっても静かで、ゆっくり走っても楽しい。
そして、手や脚を通して、自転車と対話しているような感覚がある。
速さを求めて走ることもできるし、ただ走ることを楽しむこともできる。
今回の50kmは、そんなCF3の魅力をあらためて教えてくれた。
もし、自転車の幅をひろげたかったり、コルナゴに興味がある方がいたら、ぜひ一度、体験してみてほしい。
スペックや写真だけでは伝わらないものがある。
この自転車がどんなふうに走り、どんな感覚を乗り手に返してくれるのか。
それは、実際に乗ってみて初めて分かることなのだと思う。
COLNAGO FOR FERRARI CF3。やっぱり、コルナゴはいい。
そう思わせてくれる、素晴らしい初乗りだった。


